きっとあの時と同じことを、父さんの死に目に会った時にしたのと同じ選択を……およそ悪魔らしくない選択をマリアさんはしたのだ。
だけどそれはきっと天の理に反することで。
だから、マリアさんの翼は今消えかかっていて。
「馬鹿……だ。マリアさんは馬鹿だ……あげたのに。こんな羽根。……またしんどい思いしなくちゃいけないじゃないか」
「そういわずにさあ~……やなカンジじゃあるけど、生命力だけはピカイチなんだからさあ」
そんな姿になっても変わらない、呑気な歌うような声に、更に胸が締め付けられる。
「でも……」
羽根だけじゃなくて、マリアさんの身体全体が薄くなってきている。
これはやばい感じがする。
空に還るどころじゃなくて……これじゃ、マリアさんは多分――
「本当に、馬鹿ですね」
消えていくマリアさんの身体に腕を廻してそれを引き止めようとしたその時、不意に頭上から誰かの声が聞こえた。
そして、瞬時にあたりを白く眩しい光が包みこむ。

