二人がいる部屋は、狭くて質素なものだけれど。
そこに流れる空気はとても暖かそうで、思わず見るものの気持ちをやわらかくさせてしまいそうなほど暖かい。
マリアさんの言っていたことは本当だった。
僕は紛れもなく、マリアさんの子供で。
そして……父さんとマリアさんは愛し合っていたのだ。
『そういえば……』
ふと、思い当たったことがある。
父さんと僕はずっと二人きりで生活してきて、そこに誰か女の人の気配があったことはない。
マリアさんの言うように、記憶を改ざんされていたらしい父さんは、母さんは死んだと僕に言っていたけれど。
だからといって、誰か替わりの母親を、などということは一度もなかった。
真実を変えられても。
記憶を奪われても。
父さんの心の奥底にはずっと……。

