声に出せず、心の中で叫ぶしかない僕に構うことなくマリアさんは羽根を押しつづける。
「う……」
羽根が抵抗しているのだろうか?
マリアさんが少し苦しげな表情をした。
『何……やってんだよ。マリアさん』
僕は懸命に目で訴えるがマリアさんは気が付いてくれない。
羽根はあげるのに……もらってほしいのに……そんな……苦しんでまで何を?
どうにか訴えたくて、動かない腕に必死で意識を集中させて、ようやくほんの少し動かした指先をマリアさんへと伸ばす。
それに気付いたマリアさんは、再び僕と視線を合わせて、その目を細めて笑った。
「智彦は、まだ死んじゃ駄目だ」
笑顔でそう言うマリアさんの姿にノイズが走る。
胸に何かが押し込まれる感覚。
重く、熱い塊のようなもの。
そこから伝わってくる波動で、微かに身体が震えた。
僕の視界はまた歪み始める――

