すぐに固い表情のマリアさんと目が合った。
マリアさんはそのまま暫く、じっと僕の目を覗き込むように見つめて……そして。
不意に、ニィ……と笑った。
僕の視界の中で、やけに鮮やかな赤。
横たわる半月のように弧をえがいたその唇から……。
「死なせや、しないよ」
ゆっくりと、でも、はっきり紡がれた言葉。
『え……?』
咄嗟にその意味が飲み込めないでいる僕の目の前でマリアさんは、両手で羽根を押さえるようにかざし、おもむろに僕の胸に向かって、ぐいぐいと、羽根を押し戻し始めた。
『何……やって……!! そんなことしたら……』
僕は驚いて目を見開いた。
羽根を戻す意味が分からない。
アレが僕の中に戻ってしまえば、マリアさんは羽根を取り戻せなくなるんじゃないのか?
だからこそ僕が死んで羽根が出てくるチャンスを逃さないようにここへ来たはずじゃなかったのか?

