黒い羽根




 ぐるぐるとした、歪んだ空間の中で……やけに頭が冴えていくのを感じていた。

 羽根が僕の中から出て行った影響だろうか?

 今まで僕に関わってくれた人たちの、言葉に隠された優しさを、今は素直に受け止めることが出来る。

 僕はなんて馬鹿だったんだろう。 今まで気付かずにいたなんて。

 僕自身がそうであるように、人は誰も悪意だけの塊なんかじゃない。そんな簡単なことなのに。

 羽根の存在を知らなかった僕には仕方なかったかもしれないけれど。

 それでも、せめて。

 マリアさんに羽根のことを聞いた時点で気付いても良かったのだ。

 そうすれば……。

 あの八百屋のおばさんや小百合さんくらいには、素直にお礼を言ってお別れすることができただろうに。