黒い羽根


 その場の空気を満たす居心地の悪さに僕が言葉をだせずにいると

「こんにちわ~!遠い親戚で~す。智彦がいつもお世話になってま~す」

 そんな空気などお構いなしのマリアさんが、いきなりぐいっと僕の首に腕を巻きつけ、肩を組んで言い放つ。

「ちょ……」

 小百合さんの目の前でキャミソール一枚のマリアさんに肩を組まれ、反射的に身体をはなそうとするが、腕に込められた力に阻止される。

 もがきながらおそるおそる小百合さんの顔を伺い見ると、頬が紅潮している。

『やだやだやだ、絶対親戚なんて嘘だっ。あんな密着してありえないっ』

 聞こえてくる小百合さんの声は何処となく怒気をはらんでいる。
 

 
 これは思わしくない事態。