「……風邪って言ってたけど、元気そうね」
そういう小百合さんの目線が、僕ではなくマリアさんに向いているのに気付いた。
「誰?」
心なしかとがった声と同時に。
『何よ、せっかく人が心配して配達途中に差し入れでも思ったら……女の人なんか連れこんで』
聞こえてきた声に目線を下げると、小百合さんの手に握られたコンビニ袋が見えた。
どうやら一人暮らしで寝込んでしまった僕を心配して、忙しい中わざわざ差し入れを買ってきてくれたらしい。
一気になんだか気まずい思いに駆られ、
「あ、えっと……遠縁の親戚で……」
もぞもぞと歯切れの悪い返しになってしまう。
「ふ~ん……」
手に握った袋をそっと後ろに隠すようにしながら、小百合さんはじっとマリアさんを見ている。

