黒い羽根

 

 なかなか開かないドアに、来訪者がもう一度チャイムを鳴らす。

「はい、今出ま……あっ!!」

 玄関先でもみ合っていたのだが、ほんの少しの隙をついたマリアさんに先を越されてしまった。
 
 ガチャッ。

 勢いよく開いたドアの向こうで

「きゃっ」

 と、小さくあがった女の人の悲鳴。

 驚き顔の声の主の顔には見覚えがある。

「……店長?」

 なんでこんなところにいるんだ? 

 ドアの前にいたのは、今日マリアさんに無理やり休まされたバイト先の花屋の店長。

 名前は小百合さん。

 少しだけ僕より年上のまだ若い店長。

 いつもとかわらないポロシャツにジーンズ姿にエプロンをひっかけ、ストレートの髪を後ろで一つに束ねた姿は、まぎれもなく勤務中であろうことを伺わせる。

 しかも今日は僕が急に休んでしまったから、普段以上に忙しいはずなのに……。

 そう思いながら小百合さんの顔を見ると