『大家さんに苦情がいくまえになんとかしなくちゃ』
どのみち早く何か作って食べさせないことには大人しくなってはくれないのだろう。
そう思い。
どうにもならないことを考えるのも、よくわからないマリアさんの疲労の理由を考えるのも、とりあえずやめにして料理に専念することにする。
そういや当然の流れのように台所にたたされているが、別にマリアさんが作ってもよかったんじゃないのか?
僕だって一度くらい『母親』なるものの手料理を食べてみたい気もするのだが……。
どこか腑に落ちないものを感じながらも、先ほどマリアさんが値切った傷入りトマトに包丁をいれる。
傷入りといっても、さほど気にならない程度のちょっとしたもので、真っ赤に熟したみずみずしい切り口は目にも鮮やか。
それを水切りしてあったレタスの上に飾ろうとつまみ上げた時――

