黒い羽根



 なんて不毛な話。

 これ以上考えたり余計な詮索をするのは無駄に気を揉み疲れるだけだ。

「ね~……疲れたしお腹もうぺっこぺこ。まだ~?」

 せっつくマリアさんの声が、居間の方から聞こえてくる。

 いや、疲れたのはどちらかといえば散々な目に遭いながら帰ってきた僕の方だし。

 僕が災難に遭っている間、マリアさんは不思議なことにその被害をうけることなく、僕を見て笑ってただけだし。

 何でマリアさんが疲れたと言うのだろう。

 ああ、そういえばここに来るまで色々大変だったとかは言っていたけど……でも、それでもあれだけ強引に僕にアパートまで案内させる元気があったわけだし。

「ま~だ~?」

 考え込む間にもマリアさんのごはんコールは繰り返され、待ちきれないのか、ついには畳に投げ出した足をバタバタとさせ始めている。

 下の部屋の人、留守だといいけれど。

 いるとしたらきっと迷惑この上ないことだろう。