黒い羽根


「死ぬのはかまわないんだけど……」

 着替え終わり、溜息と共にぼそりと呟く。

「こう……あんまりドキドキさせられたり、余計な災難にあうのはいやな感じだ」

 どうせなら、何もわからないくらいあっさりと死んでしまうわけにはいかないものだろうか?

 死ぬこと自体に抵抗があるわけではないが、怖かったり痛い目にあうのは、歓迎できることではない。

 愚痴っぽく漏らした言葉に、マリアさんは

「まあまあ、ちょっとした余興余興」

と相変わらず軽いノリ。

 あからさまに他人事だからといったオーラ全開で笑っている。

 軽くめまいを覚えながら。

「はっきりいつ死ぬとかわかんないの?」

 そう聞いてみたが

「うん。知り合いが羽根のことがあるからって智彦の寿命のこと教えてくれたんだけど……はっきりした理由とか時間は教えてくんなかったからなあ~」

 なんて言って、ぼりぼりと頭を掻きながら苦笑いで返された。

「知りあい……ねえ……」