黒い羽根


 僕はますます意味が分からず顔をしかめる。

「そこでなんで僕が喜ぶんですか?」

 問い返す僕にマリアさんはニヤリと笑って見せた。

「よくよく考えてみ? あんたに埋まってる羽根はあたしの羽根……つまりは悪魔の羽根だ。悪魔の羽根は負のエネルギーを吸い寄せて成長する。……ってことはだ」

 そこまで聞いて、ようやく少し話が見えてきた。

「僕が、人の心を読めるのは……」

「そ。しかもいや~な心ばっか読んじゃうのは」

「……ここにある羽根のせい?」

 自分の胸の、さっきマリアさんが頬擦りしていたあたりに手をあてる。

 羽根が埋められていると言われても、いまいち実感は湧かないが……。

 それは、自分がずっと感じてきた人とは違う憂鬱さの原因を、すっぽりと納得させるに充分な理由付けだった。

「その羽根ともうすぐおさらばできるんだよ」

 もともと自分自身、常識で考えられない悩みを持つ存在だったのだ。

 今更信じられないも何もありはしない。

 自分が人と違う原因を知り、内心、ほっとしたような嬉しさがじわじわとこみ上げてきた僕だったが――