黒い羽根





「羽根を、切られたの」



 一見立派に見える、今、僕が目にしている翼には『大事な羽根』が無いのだそうだ。

「この翼はただのお飾り……だって飛べやしないもの」

 飛ぶための要となる魔力の羽根を切られ、地上に作られた結界の中に閉じ込められたマリアさん。

 父や僕にも厳しい見張りがつけられ、マリアさんは父や僕の下に行くことは許されず。

 そして、マリアさんの大事な羽根は――



「ここに、あるのよねえ……」

 突然僕の胸元に頬を擦りよせてきたマリアさんに

「……って!! 何やってんですかっ!?」

 体が硬直してしまった僕は、顔が一気に真っ赤になるのを感じながら思わず上ずった声を上げていた。

 母親と言われてもいまいち実感が湧かないというのに。キャミソール一枚で肩も露な女の人に、こうも密着されてはたまったもんじゃない。