黒い羽根



 話を聞く限りでは、僕が生まれるより前は、悪い意味で更に元気が良かったらしい父。

 
 全くの健康体でありながら、寿命が二十三と定められていた父の死因は、その切れ安く喧嘩っ早い性格によって招かれた。

 酔っ払ったあげくにたちの悪い強面のお兄さん方に絡んでリンチにあい、全身打撲。

 そこで父は寿命を終えるはずだった。

「で、お迎えに行った訳なんだけどね。和夫さん……私を見て怖がるどころか……こう言ってくれたのよ」

 話すマリアさんの頬がうっすらと赤く染まる。

 息も絶え絶えな状態でマリアさんと対面した父は――

「ああ……こんなべっぴんさんがお迎えに来てくれるなら、死ぬのも悪くないもんだなっ、てね……そりゃもう嬉しそうに笑ってくれたのよ~」

 ……だったそうだ。

「もう、ね。はじめてだったわ……そんな風に言ってもらえたの。嬉しかったし、潔い上にカッコイイったら……笑顔がまた素敵でねえ……あたし、一発で惚れたわ」

 興奮気味で話すマリアさんの顔はすっかり紅潮していて、その時の感動ぶりは見事に僕に伝わった。

 思い出を懐かしむように幸せそうな笑みを浮かべるマリアさん。

 でも、僕には疑問があった。