「馬鹿野郎!! ぼーっとしてんじゃねえっ!!」 

 体を起こし、膝をついたままの体勢で。

 運転席の窓から大声で罵声を浴びせ、トラックが勢い良く走り去るのをぼんやりと見送る。

 地面に散らばる、投げ出されたカバンから飛び出したバイト先の制服や財布をゆっくりと拾い集めながら、乗っていた自転車はどこかと目で探すと、自転車は僕より数メートル後方に倒れていた。

 急な勾配の下り坂。

 広い十字路に差し掛かるところで急に聞こえたクラクションに、反射的に急ブレーキをかけた僕は、随分と派手にふっとんだらしい。

 そのわりには、手の平と膝に少々のかすり傷と、服が汚れた程度。

 僕の意思とは関係なく、無意識のうちに保身をとった僕の体の器用さが恨めしい。