「僕の母さんは、僕が生まれた時に死んだはずだ」
僕を冷やかした後、再び仏壇の前に座り、僕に背を向けていたはずのマリアさんが言った台詞に、ビクッとして目を見開く僕。
振り向いたマリアさんはなにやら不機嫌そうな顔で。
「そう聞いてたんでしょ? ……あいつら、和夫さんの記憶もいじるなんてサイテー」
チッ、と舌打ちすると、立ち上がり。僕のほうへ歩み寄ると、僕の目をじっと見つめながら、ニヤリと笑った。
「教えてあげようか? あんたが何で人の心が読めるのか」
「え……?」
「人の心が読めるんでしょ? しかも聞こえてくるのは醜~い言葉ばっかり……違う?」
いきなり核心をつかれて、何も言えない僕に構わず。
「世の中悪意ばっかりでつまんない。どうしてこんなことばっかり聞かなきゃいけない。苦しい……つらい……いっそ死んでしまえれば楽なのに……」
僕がいつも思ってることをそのままに。
「そう、思ってるでしょ?」
口に出して。
そして、唇と同じ、真っ赤なマニュキアの塗られた長い爪の先で、僕の胸の真ん中を指して、彼女は言った。
「原因はここにある」
……と。

