「聞こえてたんですか? ……ってか電話盗み聞きするなんて悪趣味ですよ」
「や~だ~、人聞き悪い言い方しないでくれない? 盗み聞きしたんじゃなくて聞こえたのよ。ほら、あたしって、耳がいいからっ」
責める僕に、マリアさんはニヒヒ、と歯を見せて笑う。
「で? もしかして店長さんって智彦の彼女だったりするの? 店長っていうくらいだから年上よね。やだ、智彦ってば年上キラー?」
「……っ! そんなんじゃありませんよっ。第一そんな言い方……僕にもだけど、店長にも失礼ですよっ。店長は普段から誰にだって親切な人なんです」
「ふ~ん? そうなんだ。つまんな~い。でも、ありゃあそれだけとも思えない感じがしたけどなあ~」
僕が否定すると、がっかりしたように口を尖らせながらも、まだまだ妄想は働かせ続けているような台詞をぶつぶつと呟きながら僕を疑い深そうに見上げる。
「そんな目で見ても、違うものは違います」
面白がって冷やかしてるようにしか見えない姿に、僕もさすがに少し苛々してきて。
そう言いながらじろりと睨んでみると。
「やだな~。何怒ってんの。そうじゃないかな~って予想を言っただけじゃない」

