「そう……? なら、いいけど。あんまり無理しないでね。きつい時は甘えてくれていいんだよ。いつも私もお店助けてもらってるんだから」
「あ……はい。ありがとうございます。でも本当に大丈夫ですから」
お礼を言いながらも、あくまで一人で大丈夫だと重ねると、ようやく納得したように店長が小さく吐息を吐くのが電話越しに聞こえた。
「わかったわ。じゃあ、今日は病院行ったらゆっくり寝てるのよ。明日も無理はしないで、きつかったら休んでいいからね」
「はい。その時はまた電話します」
店長の『お大事に』を聞き終えて、僕は大きく息を吐きながら携帯を閉じた。
「へ~え。店長さんって女の人? しかもまだ若い子でしょ~? なんだか随分智彦に優しいのね~」
背後から聞こえた声にハッとして振り返ると。
バイトに行くことも許さず、無理やり僕の腕をひっぱってきた張本人がいつのまにか僕の方を見ていて、ニヤニヤとした笑いを浮かべている。
すぐ隣にいたならば「こいつう~」とでも言って軽く肘で小突いてきそうな…………そんな笑み。

