信号が赤になり停車すると、開け放していた車の窓から、強い横風が吹き込んだ。
「わ……」
思わず一瞬目をつぶる。
そして再び目を開くと……車内にふわりと舞いこんだ、白い羽根。
「あら……綺麗」
それに目を留めた小百合さんの声を聞きながら、思わず窓から外を見回したものの、別に飛んでる鳥の姿ひとつ見つけることはなかった。
膝に落ちた羽根を拾い上げ、親指と人差し指でつまんで目の前にかざしてみる。
差し込む陽光をうけて、かすかに光沢を見せる白い羽根。
くるくると回して指で弄ぶ。
羽根を見ていると、あの日、突然に目の前に現れ……そしてまた遠く手の届かないところへ去っていった彼女を思い出す。
目の前で広げた翼から舞い落ちた羽根を思い出す。
独特の弧を描く唇を。
緩やかなカーヴでしなる黒髪を。
強引に僕の手をひいた、細くて白い指を。
おちゃらけているようで、少し乱暴で。
だけど、強く、優しい言葉を紡ぐあの声を――

