黒い羽根



「仕事のノルマはこなしていますからね。あまり最初から締め付けすぎてまた脱走されても困りますし…………それに所詮私も……父上の子ですから」



 最後の一言に込められた意味。

 それは聞くまでもない。
 


「ふふ……そうだな。そしてお前と俺は紛れもなく兄弟だ」

 鳥はそう言って笑い、満足げに頷くと。

 軽やかな羽音をたてて、窓辺から飛び立っていった――

 
 






   +++

「お世話になりました」

 僕が病院のナースステーションに立ち寄りお礼を言うと。

「今度はもう階段から落っこちたりしないようにね~」

 体格の良い婦長が笑いながら手を振った。

「はい……気をつけます。ありがとうございます」

 苦笑混じりにもう一度頭を下げて、エレベーターに向かい、一階へとむかう。