始発とともに

「それくらいヤバイって事なのか…？」

北斗の言葉に、崇はコクリと頷いた。

実の娘を遺産ごときで殺すなんて考えられないが、世の中にはそういう事件もあると知っている以上、むやみに冗談では済ませられない気がした。

「この事、蓮華には黙ってて欲しいんだ。
でも、北斗には知っててほしくてさ…」

「…どうして？」

「俺は卑怯なんだよ…
北斗は蓮華の気持ちが分かるだろ？
だから、何かあったときに味方になってくれる…
少しでも味方を増やしたい、俺の勝手な思いだよ。」

苦笑いを浮かべる崇に、北斗は尊敬にも近い想いを抱いていた。

もし自分がそんな立場だったら、十年以上も片想いではいられないかも知れない。

そもそも味方になる勇気がないかも知れない。

今だから味方になると思えるだけで、平和に暮らしていたら避けたくなるに決まってる。

普段はふざけた奴だと思っていたが、崇にこんな一面があると知れたことは、北斗にとって嬉しいことだった。

「分かった。
俺は崇の味方だ、だから蓮華の味方にもなる。
安心しろ、お前を卑怯だとは思わないから。」

北斗が微笑みながら言うと、崇は安心して嬉しそうな笑顔を見せた。