始発とともに

『まだ早かったのよ…』

普段は優しい母の声には、少しだけ怒りが含まれているようだ。

家族に優しく、お兄ちゃんと呼ばれるたびにくすぐったくて嬉しい気持ちになる。

母の笑顔が、家族の中心だった。

『いや…
これからの事を思えば、早く一人立ちさせないといけないんだ。』

『それは、そうかもしれないけど…』

『北斗は一人でやっていかなくちゃならないんだぞ?』

早くも自分を一人立ちさせようと話す両親の声は、妙に心を落ち着かせた。

『北斗は…
家族じゃないんだ…』

呟くように言った父の声が全てのきっかけだったかもしれない。