始発とともに

「…学校は牢屋じゃなかったか?」

北斗が言うと、秋は苦笑いを浮かべながら頷いた。

「飛び出したのは良いけど、行く場所なんか無くて…
適当に走ってたら学校に着いたの…
学校なんか嫌いだったのに、見てたら懐かしくて…」

泣き声でそう言うと、秋は立ち上がって涙を袖で拭いた。

「でも同時に憎い気持ちもあって…
気付いたらこんな状態。」

秋は困ったように微笑んだ。

「…手伝うよ。」

北斗が言うと秋はゆっくり頷いて、二人で滅茶苦茶になった教室を片付けた。

「私、本当は学校が好きだったんだわ…
皆みたいに馬鹿になりたかったのよ。」

綺麗に整列された机を見つめながら秋が呟いた。

「今からでも馬鹿になればいい…
俺も本当は同じ気持ちだと思う。
懐かしくて、悲しくて、でも愛しいから無性に壊したくなる…
それって、本当は学校が好きだったからだろ?
…今からでも間に合うさ。」

北斗の言葉に、秋は優しく微笑んだ。

「でも、元には戻れないよ。」

諦めたような潔い声で秋が言った。

「…そうだな。
俺も帰れない…
だから、修二さんたちに甘えようと思う。」