始発とともに

一階、二階と手当たり次第に部屋を覗いたが秋の姿はなかった。

覗いた教室は、新学期に新しい生徒を迎えるための用意がされていた。

綺麗に磨かれた黒板、整列された机。

何事もなく受験した高校に行っていたら、自分もこんな教室に迎えられていたのかと思うとどこか切ない気持ちになった。

三階に向かうと、一つだけ扉の開いた教室があった。

足音を立てないように近付くと、中からドサッと物が落ちたような音がした。

北斗がゆっくり教室を覗くと、滅茶苦茶になった机と教室の真ん中に倒れた秋の姿が目に飛び込んできた。

「秋!?」

北斗は慌てて駆け寄り、秋を抱き起こした。

「秋…」

抱き起こした秋は、目を真っ赤にしながら涙を流していた。

「…北斗…
私なんで学校なんかに来ちゃったのかな…」

秋は体を北斗に預けたまま呟いた。