始発とともに

朝食を終えると、秋の部屋を覗いた。

荷物が全てあることに一瞬だけ安堵した。

いくら秋でも、現金も持たずに村から出る事は出来ないだろう。

北斗はそのまま玄関に向かい、秋を探しに行く事にした。

「北斗、探しにいくなら自転車使いなよ。」

靴を履いていたら、背後から忍に声をかけられた。

「…じゃあ、お借りします。」

「うん。
…修二さんはさ、二人の気持ちが分かるんだと思うよ。」

「え?」

自転車の鍵を外しながら、忍が言った。

「あの人も色々あって、この村に逃げてきたんだって…
詳しいことは知らないけど、多分家族と何かあったんだよ。
元々は、東京の大学の教授だったらしいから…」

「そうなんですか…」

北斗が言うと、忍は困ったように微笑んだ。

「ついでだし、夕飯の買い物してきてよ。
はい、これ。」

忍が財布を差し出し、北斗は戸惑いながらも受け取った。