「なんで連絡くれなかったんだよ!」

夏休みも1ヶ月が過ぎ、崇が合宿から戻ってきた。

「…そうなるからだろ?
蓮華が言わないでくれって言ったんだ。」

あれから蓮華は修二の家で暮らしていた。

生活に慣れてきたのか、前よりもよく笑うようになった。

「でも…」

「でもじゃない。
崇は崇の出来ることをすれば良いんだ。
それが蓮華なりの優しさなんだから。」

北斗の言葉に崇は開きかけた口を閉じた。

蓮華が崇の家に行かなかった理由は、崇が合宿に行っていたからだけじゃないのかもしれない。

崇の家は祖父母と両親が仲良く暮らす、良く言って普通の家庭だった。

両親に恵まれなかった三人と違って、崇だけは平凡だった。

蓮華は崇の家庭に憧れながらも、どこかで恨めしく思っていたのだろう。

ある意味では北斗と秋がこの村に現れなかったら、崇の片思い記録は伸びていただろうけど、二人が現れたことによって二人にも何らかしらの変化が起こる気がした。

未だに蓮華は崇に連絡を取っていなかった。

それは自分のことで心を痛めて欲しくないと願っていたからだろうが、どこかで崇に対する壁を感じて妬んでいた気持ちもあったのかもしれない。