「ここに居なよ…
帰ることないよ…」

秋は目に涙を溜めながら言った。

両親から育てたくないと言われ、毎月充分すぎる金がただ振り込まれるだけの秋。

両親が財産を持つ自分を取り合い、恨みながらも両親を捨てられない蓮華。

同じように金が関わっていて人間が苦手な二人が、ここまで違う人生を歩んでいるのはほんの一瞬の行動の違いだったかもしれない。

もし秋が両親を好きだったら、もし蓮華か両親を心底嫌っていたら、そうしたら二人は全く逆の生活をしていたかもしれない。

北斗は複雑な気持ちで二人を見ていた。

二人にはどんなでも親がいて、どんなに恨んでも血の繋がりが絶対の絆だった。

でも北斗は本当の両親を知らないし、本当の繋がりを知らない。

それはよく考えればとても悲しいことで、よく考えれば二人の気持ちは絶対に理解できなかった。

二人と同じだと思っていたのに、実は大きな壁で区切られていた。