スーツケースを閉じて、部屋を見渡す。

ここまで愛着の無い物は早々無いと思う。

だからこそ目に焼き付けた。

恨みの形。

この部屋は、自分が一番憎んでいた牢屋。

別れがこんなに嬉しいなんて思わなかった。

部屋を出て、リビングを見渡す。

置き手紙と一瞬思ったが、あの女が見るとは思えなかったから、無駄な行動は止めた。

あの女と男が暮らした家、私は同居していただけ。

「さよなら。」

妙に幸せな気持ちだった。