始発とともに

しばらく立ち尽くしていたが、男の部屋を見に行くことにした。

見事に空っぽだった。

と言うより、家全体から男の気配が消えている。

リビングのテーブルの上には、投げやりに置かれた離婚届けがあった。

触れようとして止めた。

そして自室に戻った。

ベッドに座り、部屋を見渡した。

あの女が言った通り、この家から出ていくことにした。

今思えば、あの女の提案は良いことだと思えた。

義務教育と言う鎖が外れた今、ようやく自由を与えられたのだから。