始発とともに

「あれ、今日早くない?」

綺麗に着飾り、いつもよりも濃い化粧の女。

「…今日、卒業式。」

嫌々発した声は、声帯をイライラと振るわせている気がする。

「あっそ。
で、私達離婚したから。」

ピアスを着けながら、女がさらっと言った。

「あいつは出てったからね。」

「…そう。」

軽い告白に、思わず思考が止まってしまった。

「私達、あんたをこれ以上育てたくないんだよね。
だから、独り暮らししてね?」

言葉を理解するという事は、本当はとても難しい事なのかも知れない。

「じゃあ早く住むところ決めてね。
金だけはあんたの口座に振り込むから。
あと、今日は彼が来るから、どっか行っててね♪」

気持ち悪い笑顔を浮かべた女が、軽く手を振りながら部屋を出ていった。