真夜中の駅は、家路を急ぐ人が足早に通りすぎるだけ。

終電に慌てて駆け込むのは、帰る家があるから。

真っ暗な道を歩いて、明るい家に帰る。

それは当たり前の様だけど、本当はすごく幸せなこと。

明るい家、笑顔で迎える家族、暖かい食事。

つい最近まで当たり前だった事が、一瞬で無くなってしまうことがこの世の中には存在している。

降りる人に逆らって電車に乗り込むことも、徐々に減っていく人を見ていることも、当てもない電車に乗ることも…

それは幸せを失った人しか経験出来ない事だと思う。

一瞬で消えた幸せを知っているからこそ、現実から逃げ出す権利を与えられる。



電車の音だけが耳に響き、単調な暗闇を見続ける。

それはこれから出会う絶望に似ていて、それでいて愛しくも感じる…



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