健に言われたとおり、ビール4本と雑誌とつまみを買い
歩いて10分の健の家に向かう。
相変わらず高級そうなマンションに住んでいる。
ピンポーン…
「はい、どちら様ですか?」
「俺、希。」
「お、早いねえ♪」
部屋に入るといつもどおり汚い家だった。
「ホント健っちきたねえ。」
「うるせえな。住めるからいいんだよ。」
と言いながら雑誌を開いた。
「あっそ。」
ビールは少し揺らしたせいか、プルタブを開けると
プシュッ、と音がした。
「ほい、のん。乾杯。」
「おう。」
久しぶりのビールは、やっぱりうまい。
「最近どうなの。芸能界は。」
「うーん、まあ、普通。」
「へえ~、なんかストーカーとかあるらしいから気をつけろよ。」
そういって雑誌の紙面を見せてきた。
そこには《アイドルのK・S、ファンからストーカー受ける!》
と大々的に書いてあった。
「こえーなあ、まあ、俺は大丈夫。」
大丈夫、といったけれど
少し、少しだけ
〔アサミ〕の名前が脳裏に浮かんだ。

