Moon【短編】



ドクン、ドクン…


リズミカルに心臓が動く。


きゅっと涙を堪える。


くるんとした癖っ毛に全然変わってない子供のような笑顔。


どことなく…ううん、彼はもう“大人の男”だ。



近くにいるけど、もう彼は遠い__…



視線が重なってただ見つめあう。


逸らしたいのに逸らせない。



『・・・・久実』



「な、に」



ぱっと両手を解放され『あー、くそ』と頭を抱える響。



「…何よ・・・・あ、」



もしかして化粧が崩れてるとか…


ああ、もう最悪。


今すぐにでも顔を洗いたい。


浮かれてこんなこと・・・浮かれて?


………嗚呼、そうか。


私はまだ響のことが愛しくて堪らないんだ。



『あのさ、』



「何よ、どうせ変なんでしょ!分かってるし
直すもん」



そう言って立ち上がると片腕を掴まれた。



暖かく、強い力で。