恥ずかしい想いをするのは優子だし。
 仕方ない。
 今日はもうやる事もないし、どうせ今からする事といったらコーヒー飲みながらテレビ見るくらいだし。
「持って行ってあげよう」
 パンダの絵が印刷された一枚のパンツを袋に入れ、それを持って家を出た。
 外の日差しは夏休み始めという事もあってか強く、その上、蝉の鳴き声もうるさいくらいに聞こえてくる。
 庭の隅に置いてある自転車を外に出し、籠に袋で包んだパンツを入れて、ペダルを踏んだ。
 自転車が走り出す。
 ペダルを踏む度に向かいから緩やかに吹く風は気持ちがよく、夏である筈なのに涼しくも感じられた。
 周りのいろんな風景が、私の両横を通り過ぎていく。
 自転車で近場を走るのも、たまには悪くないかもしれない。

 小学校の近場の駐輪場に自転車を停め、パンツの入った袋を持って正門を通った。
 たしか校内に来客用の窓口があった筈だけど……。
 校舎付近をうろうろしていると
「香奈さん!」
 と、後ろから声を掛けられた。
 振り向くと、すぐ側に博美がいた。
「博美? ここで何してるの?」
「それは私の台詞です。香奈さんこそ、どうして?」
「優子に、これをね」
 紙袋を見せる。
「これ、なんです?」
「優子のパンツ」
「えぇ?!」
 予想通りの反応だ。
 博美は昔から分かりやすい。
「優子が水着を服の中に着て行っちゃったから、パンツだけ家に忘れたのよ。プールに来てるでしょ?」
「はい、来てますけど……。今日は私がプールで泳いでる子供達を見守る当番なんで」
 校舎には誰かがいる気配がないのは、そのせいか。
「へぇ、昨日、あんなに遅くまで店にいたのに、頑張るのね」
「あ! そうですよ!」
 何かを思い出したように、博美の声が大きくなる。