「やばい、口裂け女が来るよ!」
「早く帰らないと!」
等と騒いでいた。
もうこの噂は、街では誰もが知っている様だ。
口裂け女。
赤いコートを身に纏い、サングラスとマスクで顔を隠した怪人。
誰がこんな古臭い噂を広めたのかは知らないけれど、地元の小学生には彼女を見たという子が何人もいる。
この噂を聞いた皓は「博美が……。博美を守らないと!」
等と言って、放課後になるなり私を、この口裂け女の出没地と言われる公園に連れ出したのだった。
実害があったっていう話は聞かないし、博美にも直接の被害はないと思うんだけどなぁ。
公園の時計を見上げると、時間は六時を回っていた。
空は完全に夕暮れ色に染まり、辺りは薄暗くなっている。
「ねぇ、皓。もう帰ろうよ。口裂け女なんて出て来ないよ」
「いいよ、帰っても。俺はまだ、ここにいるから」
もし私が帰ったとして、皓は一人でいつまでここに居続けるつもりなのだろうか。
私は首を横に振った。
「やっぱり帰らない。皓が帰るまで、一緒にいるよ」
「悪いな、こんな所に連れ出して……こんな時間まで……」
「私は大丈夫だよ。皓は? 無茶して、いつも体壊してるんだから」
「そうか?」
「そうだよ」
「……そうだったかも。ありがとな、心配してくれて」
皓は私に笑い掛ける。
やっぱり、皓の笑顔は癒されるなぁ。
楓も、啓太郎も言っていた。
皓は周りを明るくするって。
博美なんて皓が大好きで、彼にべったりだし。
ちょっとだけ……博美は小学生だけど、そんな彼女の気持ちも分かるかも。
てっ、何て事考えてるんだ私は!
私が皓の事を好きだなんて……そんな事、絶対にある筈がない。
あって堪るものか!
別に、全く気がないという訳ではないが、友達としてなら良い人だし……。
「早く帰らないと!」
等と騒いでいた。
もうこの噂は、街では誰もが知っている様だ。
口裂け女。
赤いコートを身に纏い、サングラスとマスクで顔を隠した怪人。
誰がこんな古臭い噂を広めたのかは知らないけれど、地元の小学生には彼女を見たという子が何人もいる。
この噂を聞いた皓は「博美が……。博美を守らないと!」
等と言って、放課後になるなり私を、この口裂け女の出没地と言われる公園に連れ出したのだった。
実害があったっていう話は聞かないし、博美にも直接の被害はないと思うんだけどなぁ。
公園の時計を見上げると、時間は六時を回っていた。
空は完全に夕暮れ色に染まり、辺りは薄暗くなっている。
「ねぇ、皓。もう帰ろうよ。口裂け女なんて出て来ないよ」
「いいよ、帰っても。俺はまだ、ここにいるから」
もし私が帰ったとして、皓は一人でいつまでここに居続けるつもりなのだろうか。
私は首を横に振った。
「やっぱり帰らない。皓が帰るまで、一緒にいるよ」
「悪いな、こんな所に連れ出して……こんな時間まで……」
「私は大丈夫だよ。皓は? 無茶して、いつも体壊してるんだから」
「そうか?」
「そうだよ」
「……そうだったかも。ありがとな、心配してくれて」
皓は私に笑い掛ける。
やっぱり、皓の笑顔は癒されるなぁ。
楓も、啓太郎も言っていた。
皓は周りを明るくするって。
博美なんて皓が大好きで、彼にべったりだし。
ちょっとだけ……博美は小学生だけど、そんな彼女の気持ちも分かるかも。
てっ、何て事考えてるんだ私は!
私が皓の事を好きだなんて……そんな事、絶対にある筈がない。
あって堪るものか!
別に、全く気がないという訳ではないが、友達としてなら良い人だし……。

