どんな話をされたのだろう。
 博美にも、色々とあるんだなぁ……。
 彼女の隣に座り、飲み掛けだったお酒を口に運んだ。
「啓太郎は最近どう? 何か変わった事はある?」
「最近は落ち着いてきたかな。経営も、彼女との関係も」
「一緒にこの店を切盛りしてるんでしょ?」
「うん。ホスト時代に付き合って、突然この店を任された。元々はおじいさんの店だったらしいけど」
 啓太郎も何かと苦労している。
 ある意味、楽をしているのは私だけかもしれない。
 子供達と楽しく日々を過ごして、私だけは何もせずに、ただ皓の帰りだけを待ち続けている。
 何もせずに……。

「そういえば口裂け女の噂、覚えてる?」
「ああ、小学校近くの住宅地にいるっていう、あれか」
 今年の夏前、この街に再び流れ出した噂。
 口裂け女。
 この噂が、私達の身近で最初に広まったのは、私達がまだ高校生の頃だった。
「そう。あれの真相、知りたくない?」
「え?!」
 彼の目の色が変わる。
 たしか、啓太郎はこんな噂話が大好きで、私達は彼の妙な噂談義に、しょっちゅう付き合わされていたものだ。
 ただし、彼にとっては話限定。
 実際に肝試しや心霊スポットへ行く事を、強く拒む事が度々あったものだ。

  =^_^=

「ねえ、皓。やっぱりやめた方がいいよ……」
「何言ってんだよ! 博美に何かあってからじゃ遅いんだぜ?」
 私と皓は、小学校近くの住宅街の公園のベンチに座っていた。
 もう陽は西に傾いていて、空はオレンジと青で半々の色に染まっている。
 傍から見れば、私達はどう見ても夏場に身を寄せ合っている暑苦しいカップルだ。
 実際は違うけれど。
 目の前でサッカーをして遊んでいる小学生の集団が、公園から出て行く。