風邪をひいてしまいそうだけれど、これがとても涼しくて気持ちが良い。
「さて、と……あれ?」
 服を着ようと辺りを見回したところ、パジャマは置いてあるが、下着を持って来ていない事に気付いた。
 バスタオルを巻いた状態で、パジャマを持って部屋まで下着を取りに行く事には抵抗があるが、今はママも麗太君も帰って来ていないし、問題はないだろう。
 サッサと部屋に行けば良いだけの話だ。
 パジャマを片手に、部屋を出た。
 やっぱり廊下は暑い。
 でも、ずっと涼しい場所にいたから丁度良いかもしれない。
 裸だし。
 二階へ続く階段は、玄関から然程距離はない。
 階段を一段登ろうとした瞬間の事だ。
 突然、玄関のドアが開いた。
 まずい‼
 慌てて階段を登ろうとしたが、二段目で踏み外して床に転倒した。
 パジャマとバスタオルが派手に宙を舞う。
「痛っ……腰打ったぁ」
 打った部分を押さえながら、咄嗟に瞑っていた目を開けると、玄関には唖然とした表情で私を見る、学校帰りの麗太君の姿があった。
 暫くの沈黙。
 麗太君は我に返ったのか、慌てて後ろを向いた。
 しかし、その頃には遅かった。
 バスタオルは体から完全に離れ、私は何も身に着けていない無防備な状態で床にへたり込んでいた。
「あ……あ、わ、わあああああああああ!!」
 家中に響く程の大きな声で叫び、その場に散らばっているバスタオルとパジャマを拾って階段を駆け上がった。