頷くと、普通に駄菓子屋の硝子戸を開けてみせた。
 薄暗い店内の壁や小さなケースには、幾つもの駄菓子が詰め込まれている。
 よく見ると駄菓子だけではない。
 文房具やエアガン等、種類は様々だ。
 店の人は店内にはいない。
 代わりに、店の奥に障子で閉まっている座敷から人の声が聞こえる。
 店を放っておくなんて、悪い人でも入って来たらどうするのだろう。
 不用心だなぁ。
 天井からは鈴の付いた紐がぶらさがっている。
 物を買う時は、これを鳴らして呼んでくれ、という事なのだろうか。
 麗太君はそれの先端を持ち、揺らして鈴を鳴らした。
 すると、少しの間を置いて障子が開き、よぼよぼのお婆ちゃんが出て来た。
 床に杖を突いて、今にも倒れそうだ。
「あら、麗太君。来てくれたんだね。それと、隣にいる女の子は優子ちゃんかな」
 よぼよぼのお婆ちゃんは、私を見てにっこりと笑う。
「え? 私?」
「そうだよ。あんた達が今日ここに来る事は、さっき香奈ちゃんから聞いたんだよ」
「香奈ちゃん?」
 香奈……平井香奈。
 私のママの名前だ。
「どういう事? どうしてママが? だってママは、高校の頃の友達に会うって言って……」
「リビングのテーブルの上に、ここを示したメモがあったでしょう」
 確かに私達はメモを見て、ここまで来た。
 全部、ママとこのお婆ちゃんが仕組んだのだろうか。
 でも、どうして?
「香奈! 博美! こそこそしてないで出て来なさい!」
「え?!」
 突然、お婆ちゃんは名前を呼んだ。
「ネタばらしには早いと思うんだけどなぁ」
 そう言って座敷の奥から出て来たのは、ママだった。
 隣にもう一人。