そして何より……ママの正体だ。
 ママに口裂け女が出没したと話した翌日から、それはこの街から姿を消した。
 本当に口裂け女がいなくなった事が、ママの起こした一つの行動であるのなら、一体どのようにして……また、口裂け女を街から追い出す程の力量を持つ私のママは、一体何者なのか、全ては謎である。

  =^_^=

 春も終盤に差し掛かり、少しずつではあるが季節の移りを予感させていた。
 そんな日曜日の午後の事。
「高校の頃の友達と会う約束をしてるの。夕飯までには帰って来るわ」
 それだけ言うと、ママはテーブルの上に一枚のメモ用紙を置いて、出掛けて行ってしまった。
 テーブルの上のメモ用紙……何が書いてあるのだろう。
 手を伸ばしたが、寸前で止めた。
 いくらママの物でも、勝手に見てはいけない。
 我慢しよう。
 そういえば、ママの高校時代の友達って、昔の彼氏とかだろうか。
 再会を機にお付き合いする様な関係にでもなったら……。
まさか、パパがいるんだから、ママに限って妙な事はしない筈だ。
 きっと、そうに違いない。
リビングのソファに寝転がり、テレビの電源を入れた。
適当にチャンネルを回すが、やはりこんな時間だ。
面白い番組なんて、あまりやっていない。
強いて上げるとすれば、ベタベタな展開の刑事ドラマだろうか。
回したチャンネルで放送している刑事ドラマが気になったので、番組表を見てみた。
『湯けむり温泉サスペンス 若おかみの事件簿』
 なんてベタなのだろう。
 こういったタイトルだと、何となくオチが見えて来るというものだ。
 夏頃になると、年齢層の広いドラマが頻繁に見られるのだが。
「ああ……暇だなぁ。今年の夏はキッズウォ―とか五つ子とかやるのかなぁ……」
 そんなどうでも良い事を呟いていた時、階段から音がした。
 麗太君が二階から降りて来たのだ。