「なんで分かったの?」
「同じ人が出たのよ。私が高校生だった頃に……。あぁ、懐かしいわ……」
 ママの表情はどこか切なげに見えた。
それでいて小学生である私には、到底理解する事の出来ない様な何かを秘めている。
 そんな気がした。
「まあ、私に任せて!」
 ママは胸を張って言い出した。
「どうするの?」
「口裂け女をね、この街から追い出すの。そりゃもう、ボッコボコにして」
「そんな、危ないよ!」
「そうです! 口裂け女に食べられちゃいますよ!」
 私とマミちゃんの頭に手を置いて、ママは「うりうり!」等と言いながら強く私達の頭を撫でた。
「大丈夫よ。明日には口裂け女なんて出て来なくなってるから」
 根拠はないが、ママの言葉には何故か説得力があった。

 ママの言う通り、次の日の夕方、その次の日の夕方も、口裂け女が出て来る事はなかった。
 二週間程過ぎて、ママにその事に関して聞いてみると
「出て来ない? 当たり前よ。私が追い払ったんだから。私は街の平和を守るヒーローなの! 仮面ライダーよ!」
 等と言って、妙に手の込んだ変身ポーズをとって見せた。
 この街から口裂け女はいなくなり、彼女の噂を学校で聞く事もなくなった。
 しかし、私の内では未だに疑問だけが残っている。
 口裂け女の正体とその経緯。