家に着くと、私達は無我夢中で玄関に上がった。
 すぐ後ろまで口裂け女が付いて来ている。
 そんな気がしたのだ。
 背負っているランドセルが重くて熱い。
 汗のせいだ。
 私とマミちゃんは息を切らしながら、ランドセルを背中から降ろした。
 慌てて帰って来た私達が、どうやら騒がしかったのだろう。
 リビングからママと麗太君が出て来た。
「ちょっと、二人とも。どうしたの? そんなに息切らして。かけっこでもしてきた?」
 呑気なママの問いに、私は口調を荒げる。
「そんなんじゃないの! 出たの!」
「何かの当たりくじでも引いた?」
「違うの! 口裂け女!」
 ママと麗太君は顔を見合わせ、次の瞬間笑い出した。
「まったくもう、この子は……口裂け女だって! いつの時代よ、まったくもう! 麗太君もそう思うでしょ?」
 口を押さえて堪えながら麗太君は頷く。
「……本当に出たんです!」
 マミちゃんがそう言うと、ママは少しだけ難しい顔をした。
「もしかして、赤いコートとハイヒール、それとマスクにサングラス……あとは……もの凄く低い声の……女の人?」
「はい、そうです! その人です!」