「分かんないよ……。でも、そう決まった訳ではないし……走れば越せるかな……」
「馬鹿! そんな事して、もし捕まったら食べられちゃうよ」
「でも……このままここにいるわけにもいかないし……。回り道したら、時間かかって真っ暗になっちゃうし……」
 マミちゃんの手に力が籠る。
「行こう。優子、私から離れないで」
 そうは言っているものの、彼女の声はかなり震えている。
 しかし、マミちゃんが自分に任せて欲しいと言っている以上、勝手な行動を取ったら結果は良い事には成り得ない。
 それなら、マミちゃんに付いて行くだけだ。
「行くよ!」
 マミちゃんの言葉を合図に、私達は走り出した。
 手を繋いで、口裂け女と思しき女性の横を通り過ぎた時。
 とても低い、まるで女性とは思えない様な声が聞こえた。
「もう暗くなるわ。早くお家に帰りなさい」
 それを聞いた瞬間、背筋に悪寒が走り、とても嫌な気分になった。
 マミちゃんの歩がより速まる。
 手を繋いでる状態で、マミちゃんと私の距離が少しだけ空く。
 私はマミちゃんに引っ張られる様にして、後ろを振り返らず走った。