どうにかして、麗太君が帰って来る前にマミちゃんには帰ってもらわないと。
「このチャーハン、凄く美味しいです!」
「そう、良かった。いっぱい食べてね。おかわりもあるから」
「はい!」
 ママの前でのマミちゃんは活気があって、学校では露わにする事のない表情を見せる。
 今から「帰って」だなんて、無茶なお願いは出来そうにない。
 麗太君が帰って来る前に、マミちゃんをどうにかしなければと考えを巡らせ、チャーハンを一口二口と口に運んでいた矢先、玄関のドアが開く音がした。
「あ、麗太君が帰って来たみたいね」
 ママは立ち上がり、玄関の方へ行った。
「え? 麗太君って……沙耶原……」
 驚いた様な顔をした後、マミちゃんはそう呟いた。
 麗太君が帰って来てしまった。
 もう、マミちゃんに何を言っても誤魔化す事は出来ない。
 そう悟った。

 ママは「花壇に水をあげて来る」等と言って、残したチャーハンをラップに掛けて外へ出て行ってしまった。
 私、マミちゃん、麗太君をリビングに残して。