「今朝の事です。皆さんがランドセルを背負って元気良く登校する姿。いやぁー、晴々しく思いますねぇ」
 壇上の上に立つ校長先生は、シワだらけの顔でにっこりと笑う。
 ママから聞いた話によると、校長先生は今年で定年なのだそうだ。
 だからPTAや若い先生達は、よぼよぼで今にも死んでしまいそうな校長先生に、かなり気を遣っているとかどうとか。
「あの人の話って長過ぎ。今年一杯なんて言わずに早く辞めれば良いのに」
 私の後ろで、冷たく呟いたのはマミちゃんだった。
 クールで、どこかお姉さんっぽくて、ちょっと毒舌なマミちゃん。
 それでも男女共に評判が良く、教師受けも良いらしい。
 密かな私の憧れでもある。
「話長い。あの校長、本当に辞めてくれないかなぁ」
 しかし、友人として性格や言動は理解しているつもりだ。
「マミちゃん、そんな事言ったら駄目だよ。校長先生は、もうあんなにおじいちゃんなんだから」
「おじいちゃんだからって、優しくする通りはないよ。老害って言葉、知らないの?」
 老害なんて言葉を聞いたのは初めてだ。