窓の外では、見慣れた街の景色が流れていた。
 ぼーっと眺めている内に、徐々に見慣れない景色へと変わっていく。
 街の郊外へ来たのだ。
 窓の外の見慣れない景色を見るうちに、私の中では少しずつ恐怖心が膨らんでいた。

 暫くすると、火葬場に到着した。
 広い駐車場と、その隣に芝生が茂る広い平野。
その中心に、石造りの綺麗な建物から、長い煙突を空に向かって真っ直ぐ伸ばした火葬場があった。
おそらく、燃やした遺体から出る煙は、あの煙突を通って空へ登るのだろう。

 停車場に着くと、私達はバスを降りた。
 参列者が、ぞろぞろと建物の中へ入って行く。
 私達も、それに続く。
 近くにいるママや麗太君は勿論、皆が顔色を悪くしている。
 先日まで生きていた近しい人が突然死に、遺体を焼かれる。
 その有様を、私達は見届けなくてはならない。
 誰も良い気分には、なれない筈だ。

 目の前には、五つの固い金属扉が並んでいた。
 手前には柵で仕切りがされており、私達は柵を挟んで扉の前に立っている。
 棺桶に入った遺骨が、火葬場の人達によって運ばれて来た。
 扉が開かれ、棺桶が中に入れられる。
 そして、扉が閉められた。
「一時間程で火葬は終わります。待合室がありますので、そちらでお待ち下さい。火葬が終わったら、知らせますので」
 皆が待合室へ歩いて行く中、麗太君だけはその場を動こうとはしなかった。
 ただ強く拳を握り、扉を見ている。
 ママは察した様に私に言う。
「麗太君の事、今は一人にしてあげましょう」
 私は黙って頷き、ママの後に付いて行った。


 火葬が終わったという報告が届き、皆が待合室を出る。
 その頃には、麗太君も私の隣に戻って来ていた。
 しかし、戻って来ても言葉を交わす事はなく、私もママもずっと黙っていた。
 いつもの様に笑いながら、言葉を交わす気分にはなれなかったのだ。