それほど動揺しているのだろう。
「だから麗太君は、もう私達の家族なんだよ」
 我乍ら、かなり恥ずかしい事を言ったと思う。
 頬が熱くなってくるのが、なんとなく分かる。
 きっと、真赤に赤面してるんだろうなぁ。
 ふと、ゆっくりと部屋のドアが開いた。
 麗太君は頬を赤らめ、必死に涙を堪えている。
 しかし彼の目蓋には、僅かに涙が浮かんでいた。
私から必死に視線を反らそうとしているのを見るに、強がっているのだろう。
俯く麗太君に、先程、部屋から持ちだしたメモ用紙の束と、シャーペンを手渡した。
「伝えたい事があったら、これを使って」
 麗太君は、メモ用紙の上にシャーペンを走らせる。
 書き終えた様で、それを見せる。
『僕は、平井の家族になって良いの?』
 不安そうな表情を浮かべて問う麗太君に、私は笑顔で答えた。
「勿論だよ。ママも言ってたでしょ? 麗太君が、パパに代わって私達を守ってくれるって。何も遠慮しなくて良いんだよ。麗太君は、私達の家族なんだから」
 その瞬間、何かが外れた様に麗太君の目蓋からポロポロと涙が零れ出す。
 やがて、彼は床に膝を付き、大きく泣いた。
 麗太君が声を失っていなければ、きっと大きな声を出していた事だろう。
 しかし、麗太君に声はない。
 いくら叫びたくても、泣きたくても、声には出せないのだ。
 ならママに言われた通り、私が彼の支えになってあげるんだ。