彼の温もりが一身に伝わる。
 もう、夏夜の蒸し暑さも感じない。
 今、感じているのは直に触れている皓の温もりだけ。
 それだけを受け入れる事で精一杯だった。
「ごめん……ごめんな……」
 震えた彼の声が聞こえる。
 皓ったら、また泣いてるんだ。
 きっと、私の知らないところで、また何か辛い事があったんだろうなぁ。
 皓には隠し事が多過ぎる。
 でも今の私は、そんな彼さえも愛おしく思えていた。

 その後、皓の車が停められている駐車場まで彼を見送った。
 土手から駐車場までの距離の間、いろんな話をした。
 優子や麗太君の事。
 楓の事。
 博美や啓太郎の事。
 悲しそうな顔をしたり、笑ったり。
 彼のいろんな表情も見れた。
 ああ、皓はまた私の前からいなくなってしまう。
 それでもいつか、再び私のところに帰って来てくれると信じている。
 その日がくる事を信じて待ち続けよう。
 たとえ皆が私から離れて行っても、私がお婆ちゃんになっても……。