私の頭にポンッと軽く手が置かれる。
 その後でわしゃわしゃと髪をかきまわされる。
「やっ、ちょっ!」
 この感覚、間違いない。
 こんな事を私にするのも、この手の大きさも……。
 振り返れば、そこにいた。
 長い間、私が側にいて欲しいと望んだ人。
「皓……」
「久しぶりだな、香奈」
 強気な口調、それでいて優しさがこもっている。
 皓が家を出て行った日から、彼自身は何も変わっていなかった。

 仕事の帰りに直接来たのか、皓はスーツ姿だった。
 やはり忙しいのだろうか。
 私や優子と一緒にいられない理由も、もしかしたら仕事と何か関係が……。
 聞けない。
 私に、そんな事を聞ける度胸なんてない。
 家を出て行く前までの皓は、とっても辛そうで、優子の前では必死に辛さを隠していたんだ。
 もう、あんな辛そうな皓は見たくない。
「香奈、見てみろよ。今年も凄いな」
 皓は夜空を見上げている。
 綺麗な星々、それらをよそ目に私は皓の横顔ばかりを見つめていた。
 今、純粋な気持ちで幸せそうに笑う皓を、ずっと見ていたい。
「皓……」
 彼の手を握り、そっと寄り添う。
「星、凄く綺麗……。よかった。今年も皓と一緒に星を見る事が出来て……」
「でも、望遠鏡はなしだけどな」
「仕方がないわよ。今年は啓太郎や博美を誤魔化して、ここまで一人で来たんだから」
「そっか。やっぱり俺の……」
 皓は私を真っ直ぐに見つめる。
「香奈、俺の事……怒ってる?」
 ゆっくりと首を横に振る。
「そんな事ないわ。皓には、私達には言えない自分の考えがあるんでしょ? でもね、その考えが自分一人で抱えきれなくなったら、いつでも……私と優子の所に戻って来て良いんだからね」
 彼の手が私の体に回される。
 次の瞬間、体は皓に抱き寄せられていた。