まったく、私は何を考えているのだろう。
 彼の事など気にせず、いつも通りにご飯を食べよう。
 そう思っていた矢先、ママが麗太君に話し掛ける。
「うちのご飯、お口に合うかな? 野菜炒めとかは、わりと自信作なんだけど。おいしい?」
 ゆっくりと、麗太君は頷く。
「そう! 良かったぁ! ご飯のおかわり、いっぱいあるからね」
 そんな遣り取りを前に、私はテレビに視線を集中させた。

 食事が終わった後、ママは麗太君をリビングへ呼び出した。
 きっと、麗太君のママに関する事を話すのだろう。
 私はママに言われ、その場を外した。
 一度は部屋に戻ったものの、どうしてもリビング内での出来事が気になってしまってしょうがない。
 少しだけ。
 そう思い、私は擦り足で階段を降り、リビングのドアのすぐ横に立った。
 ママの声が聞こえて来る。
「あなたのママに関しては、私もとってもショックを受けたわ。勿論、麗太君。あなたもそうなのよね」
 数秒の沈黙が下り、再び声が聞こえて来る。
「落ち着いて、聞いてちょうだい。今日、あなたのママが亡くなったわ」
 その知らせと同時に、椅子やテーブルをバンバンと叩く音がした。
 きっと、麗太君が取り乱しているのだろう。
 当然だ。
 隣の家に預けられて、その日の晩にママの死を知ってしまうなんて……残酷過ぎる。