「6年前になるわね」

とふいに母が話し始める

「まだ見ないんでしょ?貴方が案外、鈍感なんじゃないの?」

ふふふ、と笑いながら焼きたてのクッキーを一つ、慎重な手つきでつまむ。

「だとしたら、はるさん貴女のが遺伝したんだな」

と僕もクッキーをつまむ。サクサクサクとサクサクサクサクと…
はるさんとはこの母親のことである。
僕も母も親を名前で呼ばないのはおかしいと思っているのだ。

「とっても可愛い子なのよ、こよいちゃん。まるで星屑がこぼれ落ちてきて形を成したみたいなの…」

母はいつもこよいに対してこの表現を使うのだ。